訳語の違いについて

V1.3は英語のものが結構前にリリースされていましたので、必要な方はそちらで内容を確認していたと思います。しかし日本語版がリリースされてみないと分からないのが、どのような訳し方がされているかです。特にV1.2までと同じ単語をV1.3では異なる訳語を使っているものもあります。

モデルの466ページにはちゃんとそのあたりの説明がありますので、まずはそちらのいくつかを確認してみましょう。

acquisition:取得
これはもともと「調達」と訳されていました。例えば顧客に成果物を納入する際に、それを自分たちで開発するのではなく、どこからか獲得してそれを提供するような場合に使われています。特にモデルの関連要素群として、「開発」、「サービス」と並ぶ三つ目のものと使用されていました。JIS X 0160に合わせるためというのが変更の理由だそうです。

capability level:能力度レベル
これはもともと「能力レベル」と訳されていました。「成熟度レベル」には「度」が入っていますが「能力レベル」には入っていないというのがその理由だそうです。じゃあ「成熟レベル」にしてもいいじゃない、というのはいいっこなしです。CMMIの最初の翻訳から能力レベルだったので慣れるまで大変かな、と思っていましたが、これを書いているうちに既になじんできました。

Outcome:実施結果
これはもともと「成果」と訳されていました。変更の理由としては「成果」という言葉には良い結果を表しているようなニュアンスが感じられると思いますが、(特に決定分析と解決においては)悪い結果も含まれるからというのが理由だそうです。

ぼんやり見ていても気が付かないかもしれないこういった細かいニュアンスまで検討している翻訳チームの方々は、本当に細かい仕事をしておられると思います。

CMMI 今後の予定

ついにモデルがリリースされました。公開されてる今後の予定で皆様に関係がありそうなものをあげておきます。

2010年11月
  • 3つ全てのCMMIモデルのリリース

2011年1月
  • SCAMPI手法V1.3が入手可能になる
  • CMMI V1.3の公式なモデルアップグレードトレーニングのリリース
  • オフィシャルな、開発のためのCMMIV1.3入門コースのリリース
  • CMMI V1.3をSCAMPI V1.2で評定することの開始

2011年3月
  • 全ての3つの本がV1.3の内容で出版される
2011年11月
  • 11月30日でV1.2の終了、ただしSEIに承認された翻訳バージョンを除く
ということなので、今の時点で入手可能となったのは予定より早いということです。

「3つの」と言っているのは、DEV(開発)、SVC(サポート)、ACQ(調達)という3つの関連要素群を指しています。日本語版があるのはDEVだけなのでご存知無い方もいらっしゃるかもしれませんが、開発をしない組織のためのCMMIも存在します。

今V1.2でプロセスを改善している組織は、評定について心配されると思いますが、上記から少なくとも来年の11月30日までに評定を実施すれば問題ありません。また日本語版のような翻訳バージョンを使っているところについては、V1.3の翻訳版がリリースされるまでタイムラグがあるため、それ以上の猶予期間が認められと思われます。正式なアナウンスがあればまた更新いたします。

CMMI V1.3 変更点概要

現在のCMMIはV1.2なのですが、次のV1.3へのバージョンアップが2010年11月に予定され
ています。今回はそのV1.3がどんなものになる予定なのかの説明でした。
まず大きな変更のポイントは下記の通りです。

  1. 高成熟度(High Maturity)
  2. 評定の効率性
  3. 関連要素群の間の一貫性
  4. 共通プラクティスの単純化

1.高成熟度(High Maturity)
これは成熟度レベルや能力レベルの4、5についてです。どうも成熟度レベル3までと比べて4や5についてはどういうことが実施されるべきかという見解がバラついていることを何とかしようということです。

SEIは近年このテーマに力をいれており、各種プレゼンテーションやトレーニングコースが開発されています。私も高成熟度の評定をする資格を取るためにそれらに目を通したりしました。しかしやはり、モデル自身にそういう情報が無いというのはおかしな話です。今のバージョンのモデルを読んで「プロセス実績モデル」がどういうものなのかをイメージするのはかなり難しいでしょう。

そこで「共通原因」「プロセス実績モデル」「ビジネス目標」「サブプロセス」といった言葉が理解できるような情報が追加されるようです。
また、先ほどあげたプレゼンテーションや高成熟度評定の監査基準といったモデル外の情報が逆に混乱を招いている部分もあるので、それらの使用が絶対ではないということを明確にするようです。

大きな変更に見える点としては、OPM(Organizational Performance Management)とい
うプロセス領域が追加されるということがあげられます。これは成熟度レベル5に追加されるそうです。ただ「成熟度レベル5のハードルを上げるものでは無い」と強調して説明していましたので、今まで言っていなかった活動を要求するわけではないと思われます。

2.評定の効率性
SCAMPIという正式評定手法がCMMIでは定められています。成熟度レベルいくつかを決定する時には必ずこの手法を用いる必要があります。経験したことがある人は分かると思いますが、かなり手間がかかる手法です。それをもっと効率的に進められるようにしようではないか、ということです。

興味深かったのは「DA:Direct Artifact」と「IA:Indirect Artifact」を一つにしてしまうことです。DAとは直接的な作業成果物、IAとは間接的な作業成果物です。例えば「工数や費用を見積もる」というプラクティスのDAは見積もり明細や、原価明細等ですし、IAは見積もりのための会議議事録といったものです。確かにこれが実現されれば、評定の前の準備にかかる工数はかなり短縮することができそうですが、評価の仕方も変えねばならないため、どのように決着するかは楽しみです。

3.関連要素群の間の一貫性
日本語版がリリースされていないこともあって、あまり一般的ではないかもしれませんが、「サービス」や「調達」といった「開発」中心ではない組織に合わせたCMMIがあります。その3つをもう一度整理しようということです。

「サービス」とは形ある成果物を顧客に納入するのではなく、例えば教育を提供するような形態を指します。
「調達」は顧客への成果物を自分たちで開発するのではなく、供給者から調達するのが主たる方法の形態です。

V1.2の開発のためのCMMIにはプロセス領域を分ける4つのカテゴリがあります。
・プロセス管理
・プロジェクト管理
・支援
・エンジニアリング
です。
このうちプロセス管理、プロジェクト管理、支援の3つは、「サービス」でも「調達」でも同じものです。なのでこれら16個のプロセス領域は「Core Process Area」と呼ばれています。しかしエンジニアリングにあたる部分はそれぞれのやり方に必要なプロセス領域を用意することになります。

「サービス」の場合、「サービスの確立と提供(Service Establish and Delivery)」、「調達」の場合、「調達エンジニアリング(Acquisition Engineering)」というカテゴリです。すなわちV1.3では6つのカテゴリが存在し、実装する組織がどういう業務なのかによって、必要なものを選択するような形になります。

4.共通プラクティスの単純化
ご存知の通り成熟度レベル2の時点で既に10個もある共通プラクティスを整理することが出来るのではないかということです。とはいえ、今回の説明では具体的にどうなるのかはあまり分かりませんでした。強いて言えばGG4とGG5をなくしてしまうという案が出ていることぐらいです。

その他に個別の固有プラクティスをどう変更するかという点もあがっていますが、全体的にそんなに大きな変更は無さそうな感じがしました。V1.2のリリース後も少なくとも1年間はV1.2での評定も行えるようですので、今取り組んでいいる方々はそんなに気にしなくても良いかもしれません。

ただ、成熟度レベル4や5に取り組んでいる組織については色々とモデルの変更点がありそうなので、注意しておく必要があります。

今後も何か新しい情報が分かれば随時ご紹介して参ります。

※今回ご紹介した内容は正式なリリース時点では変更されている可能性がございます。

※この時の資料が公開されています。参照はこちらから。